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モデルニスモが花開いたバルセロナのガウディ建築(スペイン)

2023 7/24
目次

天才建築家ガウディとは

アントニ・ガウディ・イ・クルネット(Antoni Gaudi i Cornet/1852-1926年)はスペインのバルセロナのあるカタルーニャ地方の小さな村レウスで生まれた建築家。幼い頃は、銅細工師の父親の仕事場を見に行くのが好きで、そこで銅を叩かせてもらったりしていました。その経験が後にガウディが駆使する優れた工芸技術の基礎となりました。バルセロナの建築学校を卒業後、繊維会社の社長で大金持ちの実業家エウセビオ・グエルの支援を受け数々の独創的な建築物を設計しました。

アントニ・ガウディ

バルセロナの場所とアクセス

バルセロナはスペインのカタルーニャ州の州都で、イベリア半島の東端に位置するスペイン第二の都市です。日本からの直行便はないので、マドリードにて国内線に乗り継ぎ、又はヨーロッパや中近東内都市での乗り継ぎが必要です。

モデルニスモ(世紀末芸術)とは

モンタネールの最高傑作、カタルーニャ音楽堂(撮影:ユーラシア旅行社)

19世紀にフランスで勃興した世紀末芸術の流れを汲むスペイン版のアールヌーボ―。スペインのモデルニスモの中心となったのがバルセロナを中心としたカタルーニャ地方でした。自分たちはスペイン人ではなくカタルーニャ人だと考えているカタルーニャ州の人々は、マドリードの中央政府に対して、カタルーニャ州独特のアイデンティティを復興させたいという思想的運動の一面も含んでいました。当時のバルセロナは繊維工業を中心に繁栄したことを背景に、建築、彫刻や絵画、インテリア、音楽、文学まで広範囲にわたってモデルニスモが展開されました。ガウディの他、彼のライバルであるドメネク・イ・モンタネール、弟子ジュセップ・プッチ・イ・カダファルクが代表的な建築家と言えます。

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バルセロナで見られるガウディ建築

世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」

スペインのバルセロナにあるガウディの作品の世界遺産。1984年に「バルセロナのグエル公園、グエル邸、カサ・ミラ」として世界遺産に登録されました。2005年にサグラダ・ファミリアの生誕のファサードと地下礼拝堂、カサ・バトリョ、カサ・ビセンス、コロニア・グエル教会が追加登録され、「アントニ・ガウディの作品群」と名称を変えました。

サグラダ・ファミリア

1882年着工、ガウディは翌年に前任者から引継ぎ当初の設計を自分のプランに変更して建設を目指しました。現在も工事が続く、未完成の教会です。資金不足で工事が中断したりと順調に進まないため、完成まで300年以上かかるといわれていました。しかし技術の進歩や観光客による収益と寄付による潤沢な資金により、ガウディ没後100年の2026年に完成される見込みとなり、世間を驚かせました。しかし、新型コロナウイルスの影響で工事に遅れが出ており、完成は2026年以降になると発表されています。世界遺産に登録されているのは、ガウディが手掛けた生誕のファサードと地下礼拝堂です。

サグラダ・ファミリア(撮影:ユーラシア旅行社)

【生誕のファサード】サグラダ・ファミリアにある3つのファサードの内、唯一ガウディが存命中に完成したもの。生命の木の下に、聖母戴冠、受胎告知、イエスの誕生が表現されています。

生誕のファサード (撮影:ユーラシア旅行社)

【地下礼拝堂】ガウディがサグラダ・ファミリアの建設を引き継いだ時に既に工事が始まっていたので、サグラダ・ファミリアの中でも最も古い部分の一つです。1890年にガウディが完成させています。ガウディもここで祈りを捧げていました。祭壇の左側にガウディのお墓があります。

地下礼拝堂(撮影:ユーラシア旅行社)
地下礼拝堂にあるガウディのお墓(撮影:ユーラシア旅行社)

【地下博物館】ガウディは設計図だけを書く建築家とは違い、スケッチを描いたり模型を作ったりして日々新しい技術を研究していました。地下博物館にはガウディが残したスケッチや模型が残されています。中でも網状の糸に重りをつけた「逆さづり模型」が有名です。

地下博物館(撮影:ユーラシア旅行社)
逆さづり模型(撮影:ユーラシア旅行社)

【鐘楼】エレベーターで昇ることができますが、下りは階段を利用します。全て完成したら60個の鐘が取り付けられる予定で、ガウディは鐘の音を完璧なものにするために音響の研究もしていました。

鐘楼からの眺め(撮影:ユーラシア旅行社)

カサ・バトリョ

繊維業で財を成したバトリョ家がガウディに増改築を依頼したもの。1904~1906年に工事が行われました。ゼロからの新築ではなく既存の建物の増改築だったため、ほぼ外装とインテリアに集中して全力を傾けることができたカサ・バトリョはデザインにおいてガウディの最高傑作と言えます。ドラゴンの背骨のような階段の手すりと屋根、屋根裏の幾重にも重なる放物線アーチ、動物の骨のようなファサードの柱、上から下へとグラデ―ションになるようタイルを貼った吹き抜け、屋上の換気塔、ステンドグラス等見逃せないポイントが多数あります。

カサ・バトリョ (撮影:ユーラシア旅行社)
カサ・バトリョ屋上の換気扇(撮影:ユーラシア旅行)

カサ・ミラ

1906年着工、1912年に完成した、実業家ペドラ・ミラの個人邸宅兼賃貸マンションで、自動車用地下駐車場が設けられた革新的なものでした。地中海をイメージし、曲線美を多用した外観はあまりにも生活感がなく実用性に乏しいと、建設当初はバルセロナ市民から批判され、「ラ・ペドレラ(石切場)」と揶揄されました。ミラ家の住宅は1600㎡、賃貸マンションは各戸400㎡あります。ファサードのうねり、バルコニーにつけられた海藻のような鉄細工、室内の天井のさざ波、屋根裏の高さの違うパラボラアーチ、屋上には騎士のヘルメットのような形の煙突など、ガウディらしさが詰まった建物です。

カサ・ミラ(撮影:ユーラシア旅行社)
騎士のヘルメットのような煙突(撮影:ユーラシア旅行社)

カサ・ビセンス

1883~1888年に建てられた、タイル商マヌエル・ビセンスの夏の別荘でガウディ初期の作品です。ガウディといえば曲線を多用するイメージがありますが、カサ・ビセンスは直線があるムデハル様式(イスラム教の建築様式とキリスト教の建築様式が融合したスタイル)となっています。タイル商の別荘なので、タイルを多用したと考えられています。室内外に動植物の象形の装飾が施され、ガウディの自然と調和する家づくりへの思いを感じることが出来ます。

カサ・ビセンス(撮影:ユーラシア旅行社)

グエル公園

元々グエルが15ヘクタールの土地に60戸の分譲住宅の都市計画をしてガウディに設計を依頼したものです。実際に分譲されたのは2軒だけで、失敗に終わったプロジェクトといえるでしょう。ガウディはモデルハウスを買い取り、1905~1925年まで住んでいました。グエル公園は1900~1914年に手掛けたものですが、未完のままバルセロナ市に寄付され、現在は公園となっています。正門の右手に守衛所、左手に事務所があり、奥に進むと大階段があります。途中にはトカゲの噴水があり、階段をのぼり詰めると86本の列柱が立ち並ぶ市場になる予定だった広場に出ます。その上の広場は元々ギリシャ劇場になる予定でしたが、現在はバルセロナ市街と海を見渡すことができるテラスになっており、波打つベンチは割れたタイルやガラスのかけら、陶器の破片で色鮮やかに装飾されています。さらに奥には傾斜した地形をそのまま生かした回廊や、天井からごつごつした石が落ちてきそうな回廊、植物鉢を備えた柱の回廊など見どころが沢山あります。テラスに向かって左側には現在は小学校として使われている旧グエル邸、右側には現在はガウディ博物館となっている旧ガウディ邸もあります。

グエル公園 (撮影:ユーラシア旅行社)
石が落ちてきそうな回廊(撮影:ユーラシア旅行社)
大階段にあるトカゲの噴水(撮影:ユーラシア旅行社)

グエル邸

1886~1890年にかけて建てられた初期の作品で、ガウディはファサードのデザインを20種類以上提示したという力の入れようでした。グエルの母方の家系がイタリア出身だったことからヴェネツィア風の邸宅に仕上げました。見所はグエルの社交場として使われていた2階の丸天井の吹き抜けがあるサロンです。丸天井には多数の穴があり、まるで天空からの星が降り注いでいるかのようです。屋上には煙突や換気筒にカラフルなタイルが施され、ガウディらしさを感じることが出来ます。

グエル邸
丸天井の吹き抜けがあるサロン

コロニア・グエル教会

ガウディは、1898年にグエルから彼の繊維工場で働く労働者用のコロニーのために教会の建設の依頼を受けます。以来10年間、「逆さ吊り実験」をして検討を重ね、最も合理的で美しい究極の形態を探します。1908年にやっと工事を始めましたが、少人数での工事、経済不況等の理由により完成したのは地下礼拝堂だけでした。未完に終わってしまいましたが、ここで培ったノウハウがサグラダ・ファミリア建設に活かされました。

コロニア・グエル教会 (撮影:ユーラシア旅行社)
半地下の礼拝堂(撮影:ユーラシア旅行社)

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