建築の街、リガとは
バルト海に面し、ロシアとの国境を接するバルト三国のひとつ、ラトビア。
ラトビアの首都リガは、ダウガヴァ川の河口から約15kmの位置にあり、古来、交易や漁業の拠点となる天然の良港に恵まれた港町でした。
13世紀末にハンザ同盟に加盟した後にロシアとヨーロッパを結ぶ貿易拠点として街は発展を遂げ、当時の建物が残る旧市街は、その美しさで「バルト海の真珠」と称されています。
また、新市街には、19世紀末にヨーロッパで花開いたユーゲントシュティール(アールヌーボー)様式の建物が数多く残り、リガの旧市街と新市街の両方が歴史地区としてユネスコの世界遺産に登録されています。絵本のような可愛らしい街並の旧市街に残る中世の様々な建築様式と19世紀末の華美な建築物が楽しめるリガ。
時代毎に異なる、個性的な建築物がひしめき合うヨーロッパ屈指の建築都市リガは、まさに建築好きにとってはお宝いっぱいの街と言っても過言ではないでしょう。
リガへのアクセス、行き方
ラトビアは、南北に並ぶバルト三国の真ん中に位置しています。
日本からの直行便は就航していない為、ラトビアのリガへは、ヘルシンキ(フィンランド)やモスクワ(ロシア)、イスタンブール(トルコ)などで乗り継いで向かうこととなります。
なお、バルト三国のエストニア、リトアニアからは車やバスでの移動が可能ですので、エストニアとリトアニアも加えてバルト3国を訪れるケースが多いです。
リトアニアのヴィリニュスへ空路で入り、陸路ラトビア、エストニアを巡り、エストニアのタリンから空路で出る、またはその逆で巡るルートがおすすめです。
リガで必見!ユーゲントシュティール建築群
ユーゲントシュティールとは
19世紀末にヨーロッパ各地で流行した新芸術様式、ユーゲントシュティール。(フランス語のアールヌーボーのドイツ語がユーゲントシュティール)
このユーゲントシュティールでは、従来の様式に囚われず、花や植物などのモチーフや曲線の組み合わせた装飾と、鉄やガラスなどの当時の新素材の使用等を特徴としています。ユーゲントシュティールの台頭と市の拡張に伴う建築ブームが重なったリガでは、1900年頃からの僅か10数年間で膨大な数のユーゲントシュティール建築が建てられました。
数多くのリガのユーゲントシュティールを代表する建築家ミハエル・エイゼンシュテイン(「戦艦ポチョムキン」の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインの父)による建築は、新市街のアルベルタ通りとその周辺(エリザベテス通り、ストレールニエク通り)に集中して見ることができます。
アルベルタ通り12番地(ユーゲントシュティール博物館)
この博物館は、建築家のコンスタンティーンス・ペークシェーンスにより1903年に建てられたユーゲントシュティール後期民族ロマン主義建築の一部を利用しており、建物のファサードはラトビアの植物や動物を表現したモチーフで装飾されています。館内には、実際にリガで使われていた家具や美術品、食器、衣類といった品々が展示されており、当時の暮らしぶりも偲ぶことができます。また、建物内にあるヨーロッパでも屈指の傑作といわれるユーゲントシュティール様式の見事な階段も必見です。
アルベルタ通り8番地
1903年、エイゼンシュテインによる中心部の装飾が見事な建築物です。珍しい青タイルが使われ、装飾に目を凝らしてみると、長い嘴の鳥やライオン、木や花、人面などが散りばめられています。
アルベルタ通り4番地
エイゼンシュテインによる1903年の建物で、最も完成度の高いユーゲントシュティール建築のひとつといわれています。中央の窓は美しい曲線で縁取られ、4階の窓は楕円形の大きな窓のある、左右対称の美しい建物です。
エリザベテス通り33番地
エイゼンシュタイン初期(1901年)の建築で、玄関アーチの上に施された端正な人面や、2階バルコニーの柱のかわりに支える男性像、組紐や花綵文様など優美な装飾が見所です。
リガ旧市街の建築めぐり
三人兄弟の家
肩を寄せ合うように並ぶ3軒の建物の外観は、それぞれ建築当時の外観をほぼ留めており、建てられた時代ごとの建築様式を知ることができます。
まず、右端の建物が15世紀後半に建てられた長男で、リガに現存する最古の石造りの住宅です。階段式の切妻屋根とゴシックの壁龕で装飾されています。そして中央のクリームイエローの建物が次男で、17世紀半ばに建てられました。オランダのマニエリスム様式のファサードが特徴で、3棟の中では1番華やかさのある建物です。左端が三男で、17世紀後半に建てられたバロック様式の破風が特徴的な建物です。当時の土地不足からかなり間口の狭い建物ですが、アパートとして利用されていました。
三人兄弟の家はもともと独立した建造物でしたが、内部は隣同士で繋がるよう修復され、現在は、ラトビア建築博物館として内部が公開されています。15世紀から17世紀の住宅の構造を外部からだけでなく、内部も実際に見比べることができる貴重な場所となっています。
ブラックヘッドの会館
市庁舎前広場に建つ、リガ旧市街を象徴する建物のひとつ、ブラックヘッドの会館。
この建物は、リガがハンザ同盟の貿易で栄えた時代、1334年に未婚の貿易商人のギルド(組合)「ブラックヘッド」の為に建造されました。残念ながら第二次世界大戦中の爆撃で破壊され、1948年にはソ連によって解体されてしまいましたが、リガ建都800周年を記念して1999年に再建されました。
鮮やかなレンガ色に彫金細工や彫刻で装飾された華やかなファサード、月・日・時間と月齢を刻む大時計、館内の壮麗な天井画が描かれた大ホールなどが見事に再現されています。
リガ大聖堂
リガ大聖堂は、1211年に建設が始まり、その後何度も増改築が行われ、18世紀後半に現在のような姿になりました。その為、ロマネスク、ゴシック、バロックと異なる建築様式が混在しています。
この大聖堂で特に素晴らしいのは、ステンドグラスとパイプオルガン。北側にあるリガの歴史を表した4枚のステンドグラスは色鮮やかさと描写の細かさが見事です。
また、パイプオルガンは1882年から1883年にかけて造られ、1884年に設置されました。1番短いものは13mm、最も長いもので10mとなる6718本のパイプを持つ、当時は最大級のパイプオルガンでした。見事な木彫りの彫像が施されたフレームは16世紀のものを使用しています。
ほかに、大聖堂と南側にある修道院(現「リガの歴史と海運博物館」)の間にある回廊は、13世紀に建設されたもので、初期ゴシック様式の傑作といわれています。この回廊には、リガの古い建物の装飾、彫像、その他発掘品など「リガの歴史と海運博物館」のコレクションの一部が展示されています。
リガ市内の近代建築
世界遺産に登録されているリガの台所、中央市場
ラトビア初の高層建築、ラトビア科学アカデミー
ソ連の占領下にあった1950年代に建てられた高さ107m、リガでは異質のスターリン・クラシック様式の建物です。4月~11月は、17階(高さ65m)の展望台が一般公開されており、リガ旧市街・新市街が一望できるおすすめのスポットです。(入場料5ユーロ)
リガのおすすめホテル
Dome Hotel (ドームホテル)
旧市街のリガ大聖堂、リガ城まで歩いて2分という抜群の立地を誇るデラックスクラスのブティックホテル。18世紀末までは個人の住宅として使用されており、地下室からは13世紀初頭の遺物も発見された歴史的建造物を改修、増築した趣あるホテルです。
客室数も少ない小規模ホテルですが、その立地と趣、客室のモダンな設備やスタッフの暖かくフレンドリーなサービスで評価の高い人気のホテルです。ホテル内のレストラン「Dome Fish Restaurant」はリガでも評判の味でおすすめです。また、4月~10月は、大聖堂を望む屋上のルーフトップレストランでの食事も楽しめます。
Avalon Hotel & Con ferences (アヴァロンホテル)
旧市街、鉄道駅からすぐ近くの便利な立地のスーペリアクラスのホテル。アメリカンスタイルの大型ホテルで快適に滞在しながら街歩きをお楽しみ頂けます。