キジ島の教会群とは
キジ島は、ロシア連邦カレリア共和国の、ヨーロッパ第2の面積を誇る巨大なオネガ湖上に浮かぶ、長さ約7km、幅500mの細長い島で、ロシア正教会の美しい木造教会建築群で知られています。1990年にこれらの建築群がユネスコの世界文化遺産に登録された、ロシアでも有数の観光地です。
キジ島への行き方、アクセス
キジ島へは、ロシア連邦カレリア共和国の首都であるペトロザーツク(サンクトペテルブルクから車で約430km,約6時間)から水中翼船で訪れるのが一般的です。1時間程で到着しますが、冬はオネガ湖が氷結するので運休しています。
キジ島の見どころ
キジ島には、主に18〜20世紀に建てられた木造の聖堂、教会、礼拝堂、鐘楼など12の宗教建造物や、農家、風車小屋などが各地から移築されました。
プレオブラジェンスカヤ教会(顕栄聖堂)
1714年再建の、「ピョートル帝国と神の栄光」のモニュメントとして建てられたプレオブラジェンスカヤ教会は、おとぎ話の世界に登場するお城のような美しい外見を呈しています。聖堂は、高さ37m、幅20m、奥行き29m、頂上付近には大きな玉葱型の円蓋屋根を中心に据え、周囲に22もの小さな玉葱型の小円蓋を配した構造になっています。約3万枚も使われている、柔らかな木材から作られた屋根瓦は、陽光の加減でバラ色に輝いたり、銀色の鱗の様な光沢を見せる微妙な変化を生み出し、とても木造とは思えぬほどの美しさです。また、聖堂は雨滴対策にも技術的な工夫が凝らされています。雨水が内部に染み込んでも、天井裏にある2重の屋根板の雨樋から屋外へ水が流れ出す仕組みになっています。
ポクロフスカヤ教会(生神女庇護聖堂)
プレオブラジェンスカヤ教会の隣には八角形の鐘楼が立ち、その横には1764年建造のやや小ぶりなポクロフスカヤ教会があります。8つの円蓋に飾られて建つ姿は、木造ならではの柔らかなアンサンブルを奏で、魅力的な光景を醸しだしています。
釘を使わず、斧だけで建てられた驚異の木造技術
プレオブラジェンスカヤ教会を建てた大工たちは、モスクワのクレムリンに建つ聖堂を見て、自分たちでそれを上回る建築物を立てる決意を固めました。彼らは、驚くことに設計図もなく、目測で、大抵は手斧だけでこの壮大な聖堂を建築しました。また接合部分は、角材の両端に斧で切り込みを入れた重ね継ぎや、鳩尾(きゅうび)継ぎという手法が用いられ、釘は1本も使われていません。 しかし、この聖堂を完全な形で保存することも難しい問題であり、2009〜2020年には約10年に及ぶ大規模な修復工事が行われていました。2021年現在は、工事現場の足場もない、完全な姿をご覧いただけます。