MENU

「ピーターラビットのおはなし」出版から120年、湖水地方を巡る旅(イギリス)

2022 3/08
目次

湖水地方とは

イギリス最大の自然湖、ウィンダミア湖(撮影:ユーラシア旅行社)

イギリス北西部カンブリア郡に位置しており、西側にアイリッシュ海、中央を南北にカンブリア山地が連なる、イギリスを代表するリゾート地、保養地です。氷河時代の痕跡を色濃く残した土地には、渓谷沿いに大小無数の湖が点在し、風光明媚な景観を形作っています。イギリス国内で最大の国立公園に指定されており、作家ビアトリクス・ポターが半生を過ごしたニア・ソーリーや、詩人ウィリアム・ワーズワースが愛したグラスミアなど、まるで絵本の中の世界を歩くことができます。2022年には、湖水地方が舞台になっている「ピーターラビットのおはなし」出版120周年を記念して、日本でピーターラビット展が開催されます。

湖水地方への行き方、アクセス

ロンドン・ユーストン駅から鉄道で約4時間、オクスホルム駅で単線に乗り変えて約20分で、湖水地方南の玄関口であるウィンダミア駅に到着します。このウィンダミア駅周辺は、ホテルやB&Bなどの宿泊施設、観光案内所などが軒を連ねているので、ウィンダミア駅を起点に湖水地方を巡るのが良いでしょう。

ビアトリクス・ポターの生涯

ビアトリクス・ポター(1866-1943)

湖水地方と聞いて思い浮かべる人も多いのはピーターラビットとその作者、ビアトリクス・ポターです。ポターは1866年に裕福な中流階級の娘として、ロンドンのサウス・ケンジントンに生まれました。この時代の女性は結婚をして家庭に入るのが当たり前だと思われていた中で、自由や束縛を嫌ったポターは自立を目指し、きのこ研究やイラストレーターなどの様々な仕事を経験します。当時はまだ女性の研究者が存在しなかったため、残念ながらきのこ研究者への道は断たれてしまいますが、イラストが評価されたことにより、最終的には絵本作家として大成功を収めることになります。

1902年に出版された「ピーターラビットのおはなし」は予約だけで8,000部が売れ、1年後には15,000部が売れるという絵本としては空前絶後の大ヒットを記録します。その後、100年以上もの長きに渡り愛されたピーターラビットは、現在までに世界110カ国以上で読まれ、シリーズ全体で2億5,000万部が出版されています。

お話の舞台となっている湖水地方には、ポターが作家として最も最盛期を迎えた時代に移り住みました。その後、半生を過ごしたニア・ソーリーやヒルトップ農場などを舞台とした作品を数々出版しています。また、晩年は湖水地方の自然保護活動にも力を入れました。湖水地方が今も100年前と変わらぬ美しい景観で旅行者を楽しませてくれるのは、ポターがいてくれたからに他なりません。

湖水地方の見どころ3選

まるでピーターラビットの世界!ニア・ソーリー村とヒルトップ農場

ニアソーリー村の牧歌的な風景(撮影:ユーラシア旅行社)

わずか20世帯しかないニア・ソーリー村は、牧歌的なイギリスの田舎暮らしを体感するのにはもってこいの場所です。ポターが晩年を過ごしたヒルトップ農場も、このニア・ソーリー村にあります。小さな村を歩きながら「こねこのトムのおはなし」や「あひるのジマイマのおはなし」などにも登場した数々のスポットを巡ってみてはいかがでしょうか。

村唯一のパブとして現在も営業を続けているタワー・バンク・アームズでは、ニア・ソーリー特有の地ビールや、フィッシュ&チップスなどの郷土料理に舌鼓を打つこともできます。数多くの著名人からも愛されるピーターラビット、お店の壁にはそのことを物語るように一面に写真が飾られています。

ポターが暮らした家(撮影:ユーラシア旅行社)

ヒルトップ農場はポターが1905年、39歳の時に最初にこの湖水地方で購入した土地です。17世紀に建てられた母屋や離れ、庭園、果樹園などで構成されています。ポターが居住していたこともあり、ヒルトップ農場はピーターラビットの世界にもたびたび登場します。

ヒルトップ農場、多くの花や植物が植えられた庭(撮影:ユーラシア旅行社)

農場の玄関にはポターが大好きだったバラや、白い藤の花が沢山植えられているので、春に訪れると最も美しい景観を望むことができます。内部は博物館になっているので、ポターがどのように過ごしていたのか、当時の様子を見学することができます。

ワーズワースが愛したグラスミアとジンジャーブレッド

ワーズワースが暮らしたダブコテージ(撮影:ユーラシア旅行社)

イギリスを代表する詩人ワーズワースが29歳のとき、「これまで見た中で最も美しい場所」と気に入り移り住んだのが、このグラスミアという村。非常にコンパクトで可愛らしい村ですが、ナショナルトラストのショップをはじめ、観光客向けの土産屋や雑貨屋などが立ち並んでおり、ウィンドウショッピングをするにも楽しい場所です。

ワーズワースが暮らしたダブコテージは、湖水地方特有の漆喰の白壁とスレート屋根が特徴的。ワーズワース博物館では、ダブコテージで書いたという最盛期の作品が数多く展示されています。13世紀に建てられた聖オズワルド教会には彼のお墓があります。美しいグラスミアの村で、ワーズワースの自然への愛が溢れた詩の世界にどっぷりと浸かってみてはいかがでしょうか。

ワーズワーズ博物館(撮影:ユーラシア旅行社)
セイラ・ネルソンのグラスミア・ジンジャーブレット(撮影:ユーラシア旅行社)

そしてグラスミアで外せないのは、1854年に創設されたセイラ・ネルソンのグラスミア・ジンジャーブレット(”Sarah Nelson’s Grasmere Gingerbread”)。ワーズワースも大好物だったそうです。湖水地方で最も有名なお菓子と言っても過言ではないかもしれません。ジンジャーブレッド自体は以前から存在していましたが、セイラ・ネルソンが焼いたものは特別に美味しい!ということで、口コミで評判が広まり有名になりました。貧しい生い立ちで学校に行くことも叶わなかった女性が、自らが考案したレシピにより貧困から抜け出し、成功を収めたのです。100年以上経った今もセイラのレシピは受け継がれており、いつ訪れても行列という大人気店です。

こんなところに?謎のストーンサークル

キャッスルリッグストーンサークル(C)David Baird(CC BY-SA 2.0)

湖水地方北の玄関口、ケズウィックの町から東に約2.5kmのところにある保存状態の良いキャッスルリッグストーンサークル。最大高さ3メートルの巨石群が残され、直径30メートル程の円環になっています。この場所は見晴らしの良い牧草地のため、放牧されている羊と巨石をバックにすれば「映え」な一枚が撮影できるかもしれません。

ストーンサークルは新石器時代の紀元前3000年頃に作られたといわれ、38の石で構成されているそうなのですが、何度数えても38にならないという、なんとも不思議な場所です。

目次
閉じる