モルダヴィア(ブコヴィナ)地方の教会群とは?
モルダヴィア(ブコヴィナ)地方の教会群(Churches of Moldavia)は、ルーマニア北東のモルダヴィア地方にある、およそ1487年から1583年の間に建設されたルーマニア正教会の教会群です。教会の壁の鮮やかなフレスコ画や、大きく建物から突き出した屋根が特徴的で、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
モルダヴィア(ブコヴィナ)地方の場所、行き方、アクセス
教会群の観光拠点の街としては、国際空港のあるスチャヴァ(Suceava)や、世界遺産の教会にもアクセスしやすいグラフモールルイ(Gura Humorului)などがおすすめです。
首都のブカレストから拠点都市のスチャヴァまでは、空路で約1時間30分、車で約6時間です。また、観光向けの主要な教会は、スチャヴァから1時間ほどの郊外に点在しており、車をチャーターするのが一般的です。教会群を巡りたい場合は、効率よく回ることのできるツアーで訪れることを強くおすすめします。
世界遺産を構成する8つの教会とその価値
14世紀にこの地域に成立したモルドヴァ公国では、最盛期を迎えたシュテファン大公(Ştefan cel Mare/約1433-1504年)の時代以降、オスマン帝国の侵攻を撃退するたびに修道院などが建造されていました。
その中でも現在残る12の教会のうち、1993年にスチャヴァ、ヴォロネツ、モルドヴィツァ、フモール、アルボーレ、パトラウツィ、プロボタの7教会が、2010年にはスチェヴィツァの教会が、「モルドヴァ地方の教会群」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
特徴的なのは、内壁と外壁を埋め尽くすフレスコ画の色彩美と、その壁画を太陽の日差しや風雨から守るために建物から大きく突き出した構造の屋根です。フレスコ画は聖書を題材としており、文字が読めない人々が絵で理解できるように描かれました。
モルダヴィア(ブコヴィナ)地方の教会群の観光、魅力、見どころ
そんな世界遺産のモルダヴィア(ブコヴィナ)の教会群の中でも、観光におすすめの個性あふれる5つの教会をご紹介します。
ヴォロネツ修道院(Voroneţ Monastery)
ヴォロネツ修道院は、グラフモールルイ中心部から南に約5kmの場所にあり、シュテファン大公の命によって1488年に献堂されました。最大の見所は、西壁一面に描かれた『最後の審判』のフレスコ画で、モルダヴィア地方で最も優れたフレスコ画との呼び声も高いです。
ヴォロネツ修道院のフレスコ画は、“ヴォロネツ・ブルー”とも呼ばれる鮮やかな青色の装飾で有名です。西壁だけでなく、外壁いっぱいに青が基調のフレスコ画が描かれていますが、この青色が何を原料として作られたかは未だに不明です。
モルドヴィツァ修道院(Moldoviţa Monastery)
スチャヴァから約70kmの場所に位置するモルドヴィツァ修道院は、1532年にシュテファン大公の息子であるペトゥル公によって献堂されました。黄金色が特徴的なフレスコ画には、描かれた当時に直面していたオスマン帝国の脅威が反映された、ターバン姿の人々などがモチーフとして登場します。
フモール修道院(Humor Monastery)
スチャヴァから西へ約50kmの場所に位置するのがフモール修道院です。この地方の大臣を務めていたブブイオグという人物により1530年に献堂され、修道院の外壁は“赤色”を基調にしています。『最後の審判』や『コンスタンティノープルの包囲戦』をモチーフにした壁画や、ビザンチン様式の美しいイコンは必見です。
アルボーレ修道院(Arbore Church)
アルボーレ修道院は、スチャヴァから西へ約40kmの長閑な農村にあります。一説には1503年に、スチャヴァの行政長官であったルカ・アルボーレという人物が建造したと言われています。1541年に描かれた外壁のフレスコ画は、やや緑色がかった落ち着いた色合いで風景に溶け込んでいます。
モルダヴィア(ブコヴィナ)地方の教会群の内部を見学する際には、内陣と至聖所を区切る、イコンで覆われた荘厳なイコノスタシスも見逃せません。神聖な雰囲気がただよう中で、眩い金色のイコノスタシスの美しさに驚かされます。
スチェヴィツァ修道院(Suceviţa Monastery)
スチャヴァから約55kmの山間部の村に位置しているスチェヴィツァ修道院は、モルダヴィア地方の修道院の中で最大かつ最も美しいとも言われている修道院です。外壁には『天国の梯子』や『エッサイの樹』を題材とした、色彩豊かで保存状態の良いフレスコ画が描かれています。また入り口アーチや内壁のフレスコ画も非常に美しく、端正な佇まいからは想像ができない光景に驚かされます。