オーストラリア先住民アボリジナルとは?
アボリジナルは、約4万年以上前からオーストラリアに住んでいる先住民です。オーストラリアの各地で暮らし、地域やコミュニティによってそれぞれ違う文化や言語を持っており、言語だけでも約700種類の言語や方言があったと言われています。自然を重んじる文化はオーストラリア各地に壁画や講話として残され、そこには、はるか昔から受け継がれてきた価値観があります。
かつては、「アボリジニ」とも呼ばれていましたが、歴史的背景等を理由に、現在では、「オーストラリア先住民」や「アボリジナル」と呼ばれることが一般的です。この記事では、「アボリジナル」や「先住民」と表記します。
アボリジナルの歴史
アボリジナルのルーツは約5万年以上前、陸続きだったニューギニアやアジア方面からオーストラリアへ到達したと考えられている人々です。当時の海水面は現在よりも120〜150mも低く、カヌーを使って海を渡ってきたと考えられています。「アボリジニ」はラテン語の“ab origine”を語源とし、「初めから」を意味しています。自然を重んじながら、狩猟採集社会を形成し、移動しながら暮らしていました。その様子は、現在も壁画等に残されています。
1788年、ヨーロッパからの入植により、アボリジナルの生活は変化していきます。入植者によって持ち込まれた伝染病が抗体を持たないアボリジナルの間で蔓延し、アボリジナルの人口は大幅に減少しました。天然痘や梅毒、インフルエンザ、麻疹などが流行ったと考えられています。
そして、アボリジナルと入植者達の土地を巡る争いも勃発し、徐々にアボリジナルの生活の場も減少していきました。アボリジナル達は入植者に先住民の価値観や文化、文明を認めてもらうために儀礼に招待したり、本来は成人儀礼でしか見ることのできない聖物を公開するなど、美術や芸術を使ってアボリジナルの生活を伝えました。
近年、オーストラリア政府は、アボリジナルの人々の文化多様性、社会的権利を認め、2019年には、オーストラリア政府の内閣に初のアボリジナルの閣僚が誕生し、2019年10月26日には、2017年に採択されたアボリジナルの聖地ウルル(エアーズロック)の登頂禁止令が施行されました。しかし、登頂禁止令に対する反対意見も存在し、様々な観点から現在でもアボリジナルに関する議論は続いています。
アボリジナルの文化
信仰
ドリーミングと呼ばれる独自の信仰を持ちます。ドリームは夢という意味でなく、旅をする、生活をするなどという意味で解釈されます。アボリジナルは先祖の魂を重んじて、自然、土地を大切にします。旅をして足跡が残るのと同様に先祖の魂は土地に宿るとされています。アボリジナルにとって先祖の魂こそ創造主であり、生命の源に繋がると考えられています。信仰はドリームタイムと呼ばれる文化により受け継がれます。
ドリームタイムとは?
ドリームタイムに明確な定義はなく、諸説ありますが、アボリジナルの人が大切にする神話、歴史、生活の概念のことなどを指します。
神話は、天地創造から現在も続く歴史を語り継ぐものです。主に自然、生物が存在しない「始まりの時代」、神や精霊の「創造の時代」、歴史や生活の知恵を伝える「伝承の時代」の3つがあります。
アボリジナルは過去から未来といった、連続的な時間の概念ではなく、ドリームタイムに基づいた生活をしています。その生活は、講話や芸術で表現され、近年では書籍化されている神話や物語もあります。
アボリジナルの芸術
アボリジナルは文字を持たず、絵画を残す事も文化の継承の1つです。アボリジナルの絵に見られる主な特徴は特徴はドット(点)を用いる技法とレントゲン技法と呼ばれます。ドットを用いる技法は、本来食べられる動植物や飲める水がどこにあるか示す為に幾何学的な模様が使われたのが始まりです。レントゲン技法は、動物の骨格や内臓を透けるように描いたもので、動物の食べられる部位を示す為に用いられていました。
アボリジナルの音楽、踊り
アボリジナルの音楽や踊りは精霊達と交わるための儀式や祭礼をする時に演奏されました。使われる楽器はシロアリが食べて空洞化したユーカリの木を使った管楽器「ディジュリドゥ」です。ブーメランや木の棒を使ってリズムを取り、ダンスを踊ることもあります。
言葉ではなく、音楽やダンスでドリームタイムを表現しているので、私達もアボリジナルが大切にしている価値観が感じられるかもしれません。