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アンコール遺跡観光の拠点、シェムリアップ・ガイド ~遺跡観光編~(カンボジア)

2022 4/07
目次

シェムリアップ(Siem Reap)とは

シェムリアップの町を貫く国道6号(撮影:ユーラシア旅行社)

アンコール遺跡群観光の拠点として世界中から観光客が訪れるシェムリアップは、カンボジアの首都プノンペンから北西に約250kmに位置する密林に囲まれた小さな町です。ポル・ポト時代に大量の地雷が埋められた為、観光客の受け入れが再開した1990年代末頃は立ち入り禁止のエリアも多く、世界的に有名な遺跡を擁する観光地とはいえ、町を貫く1本の国道以外は舗装された道も無いような長閑な田舎町でした。
2000年代に入り地雷の撤去が進むにつれ、アンコール遺跡を一眼見ようと世界中から観光客が押し寄せるようになり、シェムリアップは急速な発展を遂げました。現在は多くの豪華ホテル、レストラン、ショップがひしめく、カンボジア随一の賑わいを見せる町になり、人々の暮らしも豊かになりました。
シェムリアップ(Siem Reap)の名前は、訳すると「Siem=シャム(タイ)」「Reap=追い出す」という意味になります。これは17世紀、クメール人がシャム人(現在のタイ)に勝利したことに由来するそうです。

シェムリアップへの行き方、アクセス

日本からシェムリアップへは、成田空港からスカイアンコール航空が直行便を週2便ほど就航させています。または全日本空輸でプノンペン乗り継ぎ、タイ航空でバンコク乗り継ぎ、ベトナム航空でハノイ(またはホーチミン)乗り継ぎなどの方法もあります。直行便の場合6時間30分、乗り継ぎ便の場合は7時間~8時間ほど(乗り継ぎ時間含まず)で到着できます。空港から町の中心までは車で15分ほどです。
※新型コロナ感染症による渡航制限前までの情報です。最新の航空機運航スケジュールにつきましては、各社のホームページでご確認ください。

旅の目的に合わせたシェムリアップ滞在期間の目安

密林に埋もれるアンコール遺跡(撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップ(正確にはシェムリアップ州)には大小合わせ700以上ものアンコール遺跡があり、それらは広大なエリアに分布しています。修復されていない状態のまま密林に埋もれていたり、場所によってはまだ地雷撤去が完了していない地域もある為、全てを網羅することは難しいでしょう。現在公開されたいる主要な遺跡だけでもかなりの数と広さのため、シェムリアップの滞在期間に合わせて訪問する遺跡を事前に決めておくことをお勧めします。

他国と合わせてカンボジア訪問 弾丸トラベル短期滞在派(1~2泊滞在)

プノンペンや他のカンボジアない都市も訪問する行程にシェムリアップ滞在を組み込む、ベトナムやタイなど隣国を訪問するついでにシェムリアップに立ち寄る、週末や3連休を利用しての弾丸トラベルなどの場合は、シェムリアップに1泊~2泊程度の短期滞在となります。
限られた時間を有効に使って遺跡観光するには、移動時間のロスを極力無くし、シェムリアップの町に近い遺跡の中で見るべきものを厳選する必要があります。

近郊遺跡も訪問したい 充実の休日中期滞在派(3~4泊滞在)

主要な遺跡はもちろん、小規模な遺跡やシェムリアップ近郊にある遺跡も訪問して、アンコール遺跡群をしっかりと観光したい、遺跡だけではなくシェムリアップの町も楽しみたい、という場合は最低でも3泊、できれば4泊以上宿泊しての中期滞在が理想です。

アンコール遺跡群を極めたい 本気の長期滞在派

シェムリアップはもちろん、シェムリアップ州の外にも遠征してアンコール遺跡群を極めたい、という場合にはシェムリアップ滞在+アルファの長期滞在が必要です。長期と言っても、9日間の期間があればかなりの遺跡を網羅できます。ゴールデンウィークや年末年始、お盆を利用して7日~9日間程度の長期休暇が取得できる場合は、アンコール遺跡群を極める旅も充分実現可能です。

絶対外せないアンコール遺跡3選(短期・中期・長期共通)

アンコール遺跡群の主要な遺跡の多くが、シェムリアップの町から北に5km、町の中心から車で10分程度でアクセス可能なアンコール・ワット、アンコール・トム周辺エリアに集中しています。滞在期間が最短の弾丸トラベラーでも訪問可能な、絶対に行くべきアンコール遺跡もこのエリアにあります。

アンコール・ワット(Angkor Wat)

アンコール・ワット(撮影:ユーラシア旅行社)

アンコール遺跡の代名詞、クメール建築の最高傑作であるアンコール・ワット。シェムリアップを訪れて、アンコール・ワットを見ずして帰る人はほぼ皆無と言えるでしょう。12世紀初頭、アンコール王朝最盛期のスールヤヴァルマン2世によって創建されたアンコール・ワットは、東西1.5km、南北1.3kmの壕に囲まれた世界有数の巨大さを誇るヒンドゥー教寺院です。環濠を跨いで延びる寺院正面の西参道の長さは600m。立ち止まらずにまっすぐ歩いて寺院の第一回廊に到達するまで10分以上かかります。5つの塔が配置された寺院全体の造形はどの角度から見ても飽きることのない完璧な美しさ、寺院の壁じゅうに施された壮大なレリーフ、一つ一つ表情が違うデバター彫刻、アンコール・ワットだけに何日も滞在しても飽きることのない遺跡ですが、限られた時間の中で見どころを抑えるのであれば滞在中に次の2回の訪問がおすすめです。
まず1回目は早朝の朝日観賞。寺院の後ろから朝日が登る様子を堪能します。朝日が登った後は一旦アンコール・ワットから離れ午前中は別の遺跡の観光へ。アンコール・ワットの建物内部の見学は、太陽が天中を過ぎ、寺院を正面から照らす午後になってからがお勧めです。第1回廊から第3回廊まで、2時間~3時間で一通り見ることができます。

バイヨン(Bayon)

バイヨンの観世音菩薩の四面仏塔(撮影:ユーラシア旅行社)

バイヨンはアンコール・ワットの北、一辺3kmの環濠に囲まれた城塞都市遺跡、アンコール・トムの中心にある寺院です。
アンコール・トムの中には複数の有名な遺跡がありますが、短期滞在で時間が限られる場合、押さえておくべきなのがバイヨン。アンコール・ワットと共にアンコール遺跡群を代表する遺跡です。バイヨンは仏教とヒンドゥー教の混合寺院です。最大の特徴は、須弥山を象徴化したという山の形の寺院を構成する、49の巨大な観世音菩薩の四面仏塔です。尊顔の大きさはそれぞれ2m。遠目には石を積み上げた山のように見えますが、近づくにつれ仏塔の巨大な顔が目視できるようになります。そして寺院に足を踏み入れれば、そこに広がるのは四方八方に尊顔が無数に広がる謎めいた空間。12世紀当時の人々の日常の暮らしやチャンパ王国との戦いの様子を描いた見事なレリーフも必見です。そして柱に施されたアプサラ(天女)のレリーフもお見逃しなく。1時間~1時間半で一通り見学できます。

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バイヨンのアプサラレリーフ

タ・プロム(Ta Prohm)

タ・プロム(撮影:ユーラシア旅行社)

19世紀、カンボジアを植民地としたフランス人がシェムリアップに来た当時、アンコール遺跡は密林に埋もれた状態でした。王朝が滅び、打ち捨てられた建築物の上に落ちた種は石の間に根を張り、長い年月を経て巨木となって遺跡を覆い尽くしました。植物によって建物が崩れるのを防ぐため、多くの遺跡で木は取り除かれましたが、タ・プロムは発見当時の様子を残すという目的から、建築物に絡みつく樹齢300年~400年の巨木を切り倒さずそのままに保存しています、悠久の時の流れの中で、圧倒的な自然の力に凌駕され朽ちてゆく遺跡の退廃的で美しい景観が人々を魅了します。1時間~1時間半で一通り見学できます。

郊外の遺跡にも足を伸ばしてしっかり遺跡観光(中期・長期共通)

シェムリアップに3泊以上滞在する場合は、アンコール・ワットやアンコール・トム周辺遺跡に加え、シェムリアップ近郊の遺跡を訪問することも可能です。

バンテアイ・スレイ(Banteay Srei)

バンテアイ・スレイ(撮影:ユーラシア旅行社)

アンコール・ワットの北東、シェムリアップの町から40kmに位置するバンテアイ・スレイは、アンコール・ワットより100年以上前に作られました。他のアンコール遺跡と異なり、赤色の砂岩で作られ深く掘られたレリーフが特徴です。他の遺跡のレリーフが「壁画風」だとすると、バンテアイ・スレイのレリーフは「立体彫刻風」。中でも、“東洋のモナリザ”と称されるデヴァター(女神像)は必見の美しさです。

ロリュオス遺跡群(Roluos)

ロリュオスーバコン (撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップの町から南東に13kmのところにあるロリュオス遺跡群は、8世紀~9世紀にハリハラーラヤと呼ばれる王都が置かれた場所です。プリア・コー、バコン、ロレイの3つの寺院で構成されています。アンコール王朝黎明期の建築や彫刻の様式を垣間見ることができる貴重な遺跡です。

ベンメリア(Beng Mealea)

ベンメリア(撮影:ユーラシア旅行社)

密林の中で発見された当時の姿をあえて残しているタ・プロームですが、あまりにも有名になり、訪問する観光客が増えたことで段々と整備が進み、その結果「密林の中に眠る遺跡感」はかつてほどではなくなってしまいました。もっと手付かずな雰囲気の遺跡を見たい!という方は是非ベンメリアまで足を伸ばしてください。シェムリアップの町中心から東に50kmの場所にあるこの遺跡はアンコール・ワットと同じくスールヤヴァルマン2世が創建に関わっており、造られた時期はアンコール・ワットよりほんの少しだけ前です。アンコール・ワットとの類似点も多く、すぐ後に造られたアンコール・ワットのモデルになったのではないかといわれています。ベンメリアは映画のロケに使われた際に造られた足場がある以外は大きな修復はされていません。故に、800年以上の歳月の中で植物に覆われ、崩壊した、発見当時の遺跡の姿を見ることができます。
バンテアイ・スレイやロリュオス遺跡群に比べ、ベンメリアはやや町から離れた場所にあります。ベンメリアを訪問するのであれば、シェムリアップ滞在期間中の丸一日を郊外遺跡観光日に充て、同じく郊外にあるコーケー遺跡群と組み合わせて行ってみるのもお勧めです。

シェムリアップから1泊2日のエクスカーショントリップも。アンコール遺跡群を極める(長期)

シェムリアップに5連泊以上の長期滞在であれば、より深く、広くアンコール遺跡群を巡ることができます。シェムリアップから1泊2日のエクスカーショントリップも組み込めば、絶景の遺跡訪問も実現できます。

クバル・スピアン(Kubal Speak)

クバル・スピアン(撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップの町から北東に車で1時間半ほど走ると、長さ30kmほどにわたって連なる平均標高400mの小山脈、プノン・クーレンに至ります。この山の西側の麓から40分ほど山道を歩いた先に現れるのが、水中遺跡クバル・スピアンです。ここはカンボジア最大の湖であるトンレサップ湖に注ぐシェムリアップ川の源流があり、その川底の岩にはヒンドゥー教の神々や無数のリンガが彫られています。木の根が張り出し、岩が転がる山道を歩いていく価値を十分に感じられる、豊かな緑と水に囲まれた涼しげで美しい遺跡です。

バンテアイ・チュマール(Banteay Chhmar)

バンテアイ・チュマール(撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップから北西に車で3時間強のタイ国境付近の密林の中に、東西約700メートル、南北約600メートルの広大な寺院、バンテアイ・チュマールがあります。12世紀、現在のタイまで領土を拡大したスールヤヴァルマン1世はピーマイに寺院を建てました。シェムリアップからタイのピマーイ寺院までの伸びる約300Kmの道は、クメールの都、アンコール・トムから各地に向かって敷かれた5本の王道のうちの一つです。道沿いには遺跡が点在しています。その中のひとつであるバンテアイ・チュマールは、ポル・ポト時代の後1990年代に多くの盗掘被害にあった為、遺跡の各所に彫刻を切り取った跡が生々しく残りますが、盗掘を免れた美しいレリーフも多いです。特に目をひく美しさなのが「千手観音」のレリーフです。腕一本一本まで丁寧に彫り込まれた観音像が、密生する木々と崩れ落ちた遺跡の石に囲まれ、ひっそりと笑みを浮かべて佇む様子は何とも言えず神秘的です。

指先まで美しく彫られた千手観音(撮影:ユーラシア旅行社)

プリア・ヴィヒア(Preah Vihear)

プリア・ヴィヒアの参道(撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップから北東へ約200km、車で4時間ほど行ったタイ国境に位置するダンレック山。この山の斜面を利用して建てられた寺院の遺跡がプリア・ヴィヒアです。山の麓から急な階段を登ると中央祠堂まで緩やかな勾配の参道がまっすぐに伸びます。標高約600mの断崖に造られた中央祠堂の先にあるのは見渡す限り眼下に広がるカンボジア平原の絶景です。プリア・ヴィヒアは断崖に建つその姿から”天空の寺院”と称されは、眼下にカンボジア平原の絶景を臨むことができます。

プリア・ヴィヒアからの絶景(撮影:ユーラシア旅行社)

サンボール・プレイクック(Sambor Preikuk)

サンボール・プレイクック八角祠堂に彫られた空中宮殿のレリーフ(撮影:ユーラシア旅行社)

シェムリアップから150km、プノンペンに向かう道の半ばにあるサンボール・プレイクックは、6世紀末~9世紀にかけてのプレ・アンコール期に建設された大変古い寺院です。この場所にはかつて真臘国の都がありました。2017年にはカンボジア第3番目の世界遺産として登録されています。
煉瓦で作られた八角形の祠堂などアンコール遺跡とは趣の異なる、プレ・アンコールならではの遺跡の特徴が状態よく保存されています。有翼の馬やグリフォン、西洋人を彷彿させる人物など、異国から伝わってきた文化を匂わせる謎めいた彫刻も多く、アンコール遺跡群を極めたい方にとってはぜひとも訪れるべき遺跡です。

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