階段井戸とは
階段井戸とは、主に西インド一帯の暑く乾燥した地域に造られ、水がある下部まで階段で降りる構造をした井戸。階段井戸は、人々の生活用水としての役割を持つと同時に、聖なる場所として祈りの場でもありました。
その起源は紀元前からと言われ、インドに数百もあるそうですが、有名なものは、8世紀から15世紀に建てられたものが挙げられます。それぞれが個性的で、ヒンドゥー教やイスラム教の影響を受け、精密な彫刻や幾何学模様で装飾された豪華なものとなっています。
階段井戸はどこで見られるの?
目を見張るような素晴らしい階段井戸が多くみられるのは、インド西部のグジャラート州、ラジャスタン州。この2つの州は、インドの首都ニューデリーから西、パキスタンとの国境に近い地域にあります。
西インドの階段井戸 おすすめ5選
チャンド・バオリ(Chand Baori)(ラジャスタン州アブハネリ村)
9世紀に造られた階段井戸は、隣接するヒンドゥー教寺院ハーシャット・マタとともに聖なる場所として巡礼の対象となりました。その後、イスラム教徒により装飾が壊されましたが、現在目にすることができる幾何学状に配置された階段だけでも引き込まれてしまいそうな不思議な魅力を見せてくれます。ジャイプールを訪れた際には、是非訪れていただきたいお勧めの場所です!
▶▶▶長さ35m、幅35m、深さ20m
ラニ・キ・ヴァヴ(Rani Ki Vav )/王妃の階段井戸 (グジャラート州・パタン)
【世界遺産】王妃の階段井戸は、シルクロードの中継地として栄えたパタンにあり、数ある階段井戸の中でも群を抜いて大きく、素晴らしい造り。11世紀、ソーランキー王朝のビーヌディーヴァ1世没後、王妃ウダヤマティが王を偲んで造営しました。砂岩に彫られた精密なレリ-フのモチーフはヒンドゥー教の神々で、特に涅槃のヴィシュヌ神は珍しく、必見です。1986年に発見されるまで土に埋もれていたおかげで、繊細なレリーフも綺麗に残り、2014年に世界遺産登録されました。
▶▶▶長さ64m、幅20m、深さ24m
スーリヤ寺院の階段井戸(Suryamandapa of temple)(グジャラート州・モデラー)
モデラのスーリヤ寺院は、ソーランキー王朝ビーヌディーヴァ1世によって太陽神スーリヤに捧げられた寺院。寺院は、本殿(西)・拝殿・階段井戸(東)で構成されています。階段井戸の周囲には108の寺院も設置。本殿から階段井戸は東向きで、1本の完全な軸が通っていて、春分の日と秋分の日に本殿に太陽光が差し込み、ご神体にあたるように設計されています。ここは建物の内外の壁から柱に至るまでびっしりと彫り込まれた彫刻も必見です。
アダーラジ・ヴァヴ(Adalaj Vav)(グジャラート州・アダラジ)
アダーラジ・ヴァヴは、15世紀、ヴァーゲラー朝の王妃ルダによって建設が始まりましたが、完成前に王朝が滅ぼされ、その後イスラム教徒の手で完成されました。宮殿のような美しい井戸で、レリーフは花・葉・象・馬など様々なモチーフが彫られています。井戸の下の方は暗いので、彫刻に見とれて落ちないようにご注意下さい。
▶▶▶長さ70m、幅25m、深さ24m、井戸へ降りる階段の幅は8m
ダーダ・ハリ(Dada Hari)(グジャラート州・アハマダバード)
アダーラジ・ヴァヴと同時期のものですが、こちらは建設当初からイスラム教の政権下で造られました。建設者のダーダハリ王妃の名がつけられています。装飾は、サンスクリット語の法典や唐草模様の彫刻などヒンドゥー教の影響を受けたものと神々や動物を配したシンプルなイスラム教の装飾が混在している点が非常に興味深いポイント。また、サティー(寡婦殉死)で亡くなった婦人の手形が壁に残されている場所もあります(・・・ちょっと怖い)。
▶▶▶長さ70m、幅6m、深さ20m
番外編 デリーで見られる階段井戸
アグラセン・キ・バオリ(Agrasen ki Baori)(デリー)
現在見られる建築は、14世紀に再建されたもので、オリジナルは伝説の王アグラセンキによって建てられたと言い伝えがあることから、王の名前がつけられています。ここはボリウッド映画の撮影でも使われたりしています。大都会デリーの中心地コンノートプレイスから徒歩圏内にあるので、デリーを訪れたら、ふらりと立ち寄ってみては、いかが?