ラジャスタンとは
ラジャスタン州はインド最大の面積を誇る州。日本の国土に匹敵するほど広さを持ち、その土地は乾燥したタール砂漠から、トラが生息するジャングルまで多様性に富んでいます。そしてラジャ(王の)スタン(土地)というその名が表すとおり、数々の王朝が興ったラジャスタンには、王たちが築いた壮麗な城砦が各地に残り、それらは世界遺産に登録されています。
ラジャスタンへの行き方は?
日本からラジャスタン州への直行便は運航していないため、国際線でインドの首都デリーに移動し、デリーからは陸路または空路での移動となります。
ラジャスタン州は広大で、州内の都市をめぐる場合、都市間の陸路移動にも4時間以上を要するため、州内の移動手段を事前に考えておく必要があります。インドの国内線は経由便や乗継便が多く、直行便でつなげない都市が多いため、スケジュールを調整しやすい陸路移動がお勧めです。首都デリーからラジャスタン州各都市には、直行バスも運行しています。ラジャスタン州の主要都市で、デリーから最も近いジャイプールへはバスでおよそ6時間です。
色彩で巡るラジャスタン 絶対行きたいおすすめの街4選
ピンクのジャイプール(Jaipur/the Pink City)
ラジャスタン州の州都、ジャイプールは別名「ピンクシティ」と呼ばれており、旧市街の建物の壁は美しいピンク色に統一されています。ピンクの建築群の中でひときわ目をひくのは大通りに面して建つ「風の宮殿(ハワ・マハル)」と呼ばれる壮麗な建築。18世紀、宮中の女性たちがその姿を見られることなく外を眺められるような工夫を施して造られました。
同じく18世紀に造られたピンク色の宮殿、シティ・パレスには現在もマハラジャの一家が暮らしています。
青のジョードプル(Jodhpur/the Blue City)
インド最大の砂漠、タール砂漠の入り口に位置する町、ジョードプル。ここは13世紀、この地方に建国されたヒンドゥー王朝、マールワール王国の首都でした。約10㎞に及ぶ壁に囲まれたこの城郭都市の旧市街は青で統一されていることから、別名「ブルーシティ」と呼ばれています。ジョードプルのランドマークは、街を見下ろす高台に造られたメヘラーンガル城砦です。この城砦から眺めるジョードプルの青い旧市街は、ラジャスタンの暑い日差しの下、オアシスのように涼しげな癒しの風景を創り出しています。
白のウダイプル(Udaipur/the White city)
ラジャスタン州南部、灼熱の乾いた大地に宝石のように佇むオアシス都市、ウダイプル。
別名「ホワイト・シティ」と呼ばれるウダイプルには、ランドマークである「シティパレス」をはじめ、歴代のマハーラーナー(王)による、白い大理石をふんだんに用いたラージプート様式の宮殿がいくつも残り、街の中の家々の壁も白で統一されています。16世紀、この地に王都を築いたメーワール長の王、ウダイ・シンは、建都の際、河を堰き止め、いくつもの湖をつくりました。水を湛えた湖と、眩しい白の建築群が、ラジャスタン州の真珠のような美しい風景を織りなします。
黄金のジャイサルメール(Jaisalmer/the Golden city)
ラジャスタン州西部、パキスタンとの国境まで100kmほどに位置する街、ジャイサルメール。別名「ゴールデンシティ」と呼ばれる理由は、夕刻になるとわかります。黄色い砂岩を用いて造られた街が、夕日を受けて鮮やかに赤く輝いて見えるのです。
12世紀につくられ、中世にはインドと中央アジアを結ぶ対象貿易の中継地として栄えたジャイサルメールには、莫大な富が集まりました。豊かな商人や貴族が築いた、華麗な装飾彫刻を施した豪華な邸宅が今も数多く残るきらびやかで優雅な街並みに、当時の栄華を感じることができます。
必見の世界遺産 ラジャスタンの丘陵城塞群とは
ラジャスタン州の各地に築かれ、ラージプート諸王国の繁栄を今に伝える城砦群。
数ある城砦のうち、アンベール城、チットールガル城、クンバルガル城、ランタンボール城、ガグロン城、ジャイサルメール城の6つが、2013年にシリアルノミネーションで「ラジャスタンの丘陵城砦群」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
アンベール城
ジャイプール郊外にあるアンベール城は6つの城塞の中でも比較的訪問がしやすく、多くの観光客が訪れます。丘のふもとから象の背に乗って門まで行くことができるので、マハラジャ気分も味わえます。
重厚な城壁からは想像できないほど、城の内部には繊細で絢爛豪華な装飾が施されており、当時のマハラジャの権力の凄さを感じられます。
チットールガル城
15世紀、メーワール王国の王城として造られたチットールガル城。
難攻不落と謳われた城塞ですが、ムガル帝国との戦闘の末、16世紀に陥落。その後、メーワール王国は首都をウダイプルに遷都したので、チットールガル城塞は廃墟となりました。
クンバルガル城
インド北部を500㎞にわたり走るアラーヴァリー山脈の山上に造られたクンバルガル城は、15世紀にメーワール王国の城塞として造られました。ジャイナ教徒の2世紀に造られた建物を起源とするこの城塞内にはヒンドゥー教とジャイナ教の寺院が点在します。現在、既に町はなく、城塞だけが残っています。
ランタンボール城
10世紀ごろに造られたというランタンボール城は、かつてマハラジャが狩りを行っていた地域に建ちます。現在は国立公園になり、城の周りにはインド有数のベンガルトラ保護区としても知られる森があり、野性味あふれる城塞です。
ガグロン城
12世紀に造られたガグロン城は、二つの川が合流する場所に建てられています。数ある城塞の中でも大変珍しい、川を防衛手段の一部として用いています。
ジャイサルメール城
ジャイサルメール城は、12世紀に建設された黄砂岩の強固な城塞です。
この城が他と大きく違う点は、現在も城塞に人が暮らしているということです。城壁の内側には、宮殿や寺院だけではなく、民家や商店・露店が建ち並び、人々の日常が息づく今なお現役の城塞都市です。
旅好き女子を虜にするラジャスタンのおしゃれスポット「ハヴェリ」へ
ラジャスタン州にはシルクロードの隊商貿易で富を得た貴族や豪商が建てた「ハヴェリ」と呼ばれる絢爛豪華な邸宅があります。なかでもジャイサルメールは、信じがたいほど精緻なレリーフが施されたハヴェリが数多く残ります。
ひときわ目を引くのが19世紀の豪商グマン・チャンド・パトワが建てたパトウォン・キ・ハヴェリ(Patwon ki Haveli )。ジャイサルメールで最初にして最大のハヴェリです!
ラジャスタンの屋外ギャラリー シェカワティ地方のハヴェリ
ラジャスタン州北東部、シェカワティ地方(Shekhawati)にも美しいハヴェリが残ります。
この地域は一年を通じて乾燥しており、半砂漠地帯なので充分な農業もできず、今も数頭の牛やヤギを放牧しながら細々と生活を営む小さな町や村ばかり。そのような、決して豊かではない小さな田舎町に美しいフレスコ画で飾られたハヴェリが建ち並びます。18世紀から20世紀初頭まで、香辛料や絹などの交易で財を成した豪商たちが建てた邸宅です。
おすすめの町はナワルガール (Nawalgarh) とマンダワ (Mandawa) 。
現在も豪商の末裔が維持管理を行い、美しいまま保たれている邸宅もあれば、廃墟となり、地域住民が勝手に住みつき、洗濯物がはためく生活臭漂う邸宅まで実にさまざま。風雨にさらされることが少なかった中庭や軒下には当時の鮮やかな色合いが残っています。高価であった青色の顔料インディゴなどが惜しげもなくふんだんに使われ、唐草模様、幾何学模様などのデザインは何処となく、イスラム様式の雰囲気を漂わせています。ヒンドゥー教の神々、ターバンを巻きカールさせた立派な髭を蓄えた豪商の姿、優雅に踊る女性、象やラクダを引き連れた商人や王侯貴族の姿、さらには20世紀初頭のステイタスシンボルであった自動車や鉄道に誇らしげに乗る豪商達の姿など、かつての繁栄の日々がちりばめられたフレスコ画は、まるで壮大な物語絵巻のようです。