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日本の精神文化の源流、見逃せない縄文時代の土偶5選

2023 6/20
目次

土偶とは?

秋田県・伊勢堂岱縄文館の土偶(撮影:ユーラシア旅行社)

土偶とは、紀元前15,000年くらい前から始まり、1万年以上続いた縄文時代に作られた人や動物の形をしている土製品のことです。北海道から九州まで、日本で全国的に発掘されており、日本最古級の土偶は紀元前13,000年頃、滋賀県の相谷熊原(あいだにくまはら)遺跡と三重県の粥見井尻(かゆみいじり)遺跡で見つかっている土偶です。一般的には、女性が型取られ、どこかが意図的に壊されている土偶が多く出土していることから、出産や再生、豊穣や健康を祈るものや、心を豊かにする芸術品として使われていたと考えられています。

土偶の魅力

笑う土偶・秋田県・伊勢堂岱縄文館(撮影:ユーラシア旅行社)

土偶の魅力は、狩猟や採集に必要な実用的な道具ではなく、美術や芸術、宗教、呪術的な儀式など、人々の精神文化が形となって現れた日本最古のものであると考えられることです。

1万年以上前の人々が定住を始め、人間が生物として生きるために必要な衣食住関連の要素以外にも意味見出して生まれたのが土偶であり、現在の日本の芸術や祈りなどの精神文化の源流にもなることが土偶の魅力です。

見逃せない縄文時代の土偶5選

遮光器土偶(東京都・東京国立博物館)

遮光器土偶(撮影:ユーラシア旅行社)

遮光器土偶は土偶の中でも最も有名な土偶であり、重要文化財に指定されています。出土した場所は、青森県つがる市にある亀ヶ岡石器時代遺跡であり、約3,000年前の縄文時代晩期の頃の土偶です。土偶といえばこの形と言われております。遮光器土偶の名前の由来は目の部分が北方民族のイヌイットが雪中の光除けに着用した「遮光器」に似ていることからです。印象的な文様は線対称や点対称に刻まれ、甲骨文字を由来とする説やアイヌ文化にも残るイレズミである説など、様々な考察がされています。愛称は遮光器から取って「シャコちゃん」です。

合掌土偶(青森県・是川縄文館)

合掌土偶(撮影:ユーラシア旅行社)

合掌土偶は青森県八戸市の風張1遺跡から出土し、約3,500年前頃の縄文時代後期後半の土偶であり、国宝に指定されています。合掌をしている姿が印象的です。女性器がついていることから女性をかたどった土偶であることがわかっています。足の部分が割れてはいますが、アスファルトで修復された跡があり、全身が見つかっていることから、当時も大事に扱われていたと考えられています。合掌形として唯一の完形品の土偶です。

中空土偶(北海道・函館市縄文文化交流センター)

中空土偶(北海道・函館市縄文文化交流センター)

中空土偶は北海道函館市の著保内野(ちょぼないの)遺跡で出土した約3200年の縄文時代後期の土偶であり、北海道唯一の国宝に指定されています。高さ41.5センチ、幅20.1センチ、重さ1.745キロという国内最大級の中空土偶です。表面は良く磨かれ、女性的なふくよかさや妊娠線のような文様と男性的な髭や眉毛などの両方の特徴をもつ中性的な土偶であると言われています。内部をCTスキャンで撮った結果、割れやすく内部から調節しているような痕跡が見られ、欠損している両腕は故意に割られたものであることや、土坑墓群のある遺跡から発掘されたことから、土偶が祈りに使われていたものではないかと考えられています。愛称は茅部(かやべ)の茅、空洞の空を略して「カックウ」と呼ばれています。

縄文のビーナス (長野県・茅野市尖石縄文考古館)

縄文のビーナス (c)Takuma-sa(CC BY-SA 3.0)

縄文のビーナスは長野県茅野市棚畑遺跡から出土した約5000年前の縄文時代中期の土偶であり、国宝にも指定されています。全高27cmあり、女性が妊娠した姿をかたどった土偶です。粘土に雲母が入っており、光って見えることや豊かな曲線を描き、縄文時代の感性と技術を感じることができます。完全な形で意図的に埋まっている状態で出土しているのも土偶として珍しいです。茅野市尖石(とがりいし)縄文考古館にはもう一つ「仮面の女神」と呼ばれる国宝の土偶があります。

縄文の女神(山形県・山形県立博物館)

縄文の女神(c)Saigen Jiro(CC0 1.0)

縄文の女神は山形県舟形町の西ノ前遺跡から出土した約4500年前の縄文時代中期の土偶で国宝に指定されています。高さが約45センチある日本最大の土偶。八頭身ある造形の美しさと割れてはいるものの、完全に近い状態で復元されていることから、芸術的にも学術的にも評価が高いです。同じ形の土偶が南東北でいくつか見つかっていることから文化圏の中に広がる主要なデザインの一つであったことがわかっています。

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